セ・ラ・ゲ

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 コバスナ大森林。カペルが溜め息をつく。パーティメンバーは、アーヤ、エドアルド、ユージン。彼等は三人三様の表情を浮かべていた。
「だからぁ、本当なんだって。」
「でも……。」
 アーヤが口ごもる。信じてあげたいけど……と言いたげだ。
「俺は信じないぞ。シグムント様は息子のお前を庇って亡くなった。あそこがかわった空間だからって……。」
「僕もちょっと信じられないなあ。エド君の言う通り、シグムントは……。うっ。」
「泣かないで、ユージンさん!」
 カペルは慌てた。
「お前が変なことを言うから……。」
「だって本当なんだよー。僕だって信じられないんだ。父さんが……。」

 始まりは……。ハイネイルを犠牲にしたものの、世に平和が訪れ、カペルは月から帰ってきて……という幸せな夢を見た後、気づいたら、水上神殿最上階にいたはずのカペル達はピエリア湿地にいた。状況が理解できないまま、何者かに操作されたようにケルンテン城の中の今まで動かなかったワープポイントに入った。
 異常に強い敵と戦いながらグラード監獄を何とか抜けると、そこはオラデア砂丘だった。しかも、空には不可思議な模様が描かれている。空も夕焼けとはいえない不気味な色。
 戸惑いながらも進むと、またワープポイントを見つけた。そこを抜けたら……。
「カペルだけが転送されたのよね。」
「そうなんだよ。そこはヴェスプレームの塔の最上階で、父さんが立ってた。」
 自分を庇って死んだはずの父シグムント。今度は息子として彼と接したい。そう思って……。「話しかけようと側に行ったら、わたしが相手をしようって言い出して……。いきなりグリン・ヴァレスティだよ。」
「で、理解できないまま、ゲームオーバーと。」
 エドアルドが続けてくれた。
「そうなんだ。」
 カペルはうつむく。「しかもよく見たら、クリスタル系の装備をしていて、持っている剣が見たことのないものだった。だから、あれは……。」
「塔で戦ったシャドウみたいなものじゃないのかな?」
 ユージンが言った。ショックから立ち直ったらしい。「シグムントの影としか……。」
「シャドウは真っ黒でしょう。でも、あそこにいた父さんは……。生前の姿だったんです。」
「……。」
 全員で押し黙った。しばしの沈黙の後、エドアルドが口を開く。
「と・とりあえず、レベル上げをして、もう一回行くしかないんじゃないか? カペルしかあそこにはいけないんだ。本当にシグムント様かどうか、確認出来るのはお前だけなんだ。」
「う・うん。」

 というわけで、再びやってきましたセラフィックゲートのヴェスプレームの塔最上階。カペルは父の姿を気にしながらのエンチャントクリエイション。また襲われるかと思ったが、父は黙って立っている。
「よ・よし。」
 いざ戦闘開始!
 リフレクトドライブを駆使しながらのグリングリンで何とか、父を撃破。パーティ編成画面が出た。
「アーヤごめん……。」
 アーヤをはずし、父を入れた。「嘘っ。レベルがわかれた時のままって……。あの強さは一体……。ボス補正ですか?」
 そう。ゲームでよくある、敵になると強くなる法則。冗談はともかく、カペルはパーティ編成画面を閉じた。ユージンとエドアルドがシグムントを見て、呆然となった。
「シグムント様……!」
 エドアルドが泣き出したかと思えば、
「シグムント……。ああ、カペル君の言ったことは本当だったんだね。あははは……。」
 ユージンが笑う。でも、笑い方がヤバイ。
「ユージンさん、しっかり。月の雨も降ってないのに、リバスネイル化しそうになってる!」
 しかも、第一段階をすっ飛ばしてるし。
 一旦帰ることにし、ワープ装置に乗り、オラデア砂丘に戻った。
「強い……。手を貸せ。」
 状況を受け入れようと必死になる皆を置いて、シグムントが走って行ってしまった。
「ちょっと、父さん! そのレベルで突っ込んだら、死ぬから!」
 カペル達は慌てて走り出した。
 装備のお陰か、父は少し打たれ弱いだけで、皆とほぼ互角に戦ってくれた。それで、何とか無事に帰ってこられた。


「で、何でいらっしゃらないのよ?」
 パーティからはずされたアーヤがむくれつつ言った。
「知らないよ……。」
 彼女とコネクトしたままケルンテンを走り回ったが、シグムントの姿は何処にもなかった。「Talkを選んでも無視するし……、なんだか分からないよ。でも……。」
「あ!」
 カペルがシステムメニューを表示し、パーソナルスキルを選ぶと……。「シグムント様の称号が……。」
「お父さんになってるし、選べるっていうことはいるんだよね。パーティに。」
「どういうことなのかしら……。」
「さあ……。父さんを使いたい人への配慮? 父さんは万能すぎるし。」
「ぶっちゃっけたわね……。」
「装備欄、装備欄。」
 カペルは装備欄を見ようと一旦閉じたメニューを開いた。
「どうしたの?」
「うん。ほら、大森林で言ったけど、父さんは見たことのない剣を持ってたんだ。」
「そうだったわね。」
 返事はしてくれたが、アーヤはシグムントの姿自体を見ていないので、それがどうしたのという顔をしている。彼女に理解してもらうため、装備欄ではなく、パーティ編成画面で、ユージンをはずしてアーヤを入れた。ユージンをはずしたのは、彼が、幼馴染で親友のシグムントの存在を受け入れる心の準備がまだ整っていなそうだったからだ。
 カペルはアーヤとのコネクトを解くと、コバスナ大森林へ向かった。


 ケルンテンからのワープ装置の上。
「……シグムント様……。」
 アーヤが目を見開いている。カペルはとりあえずワープ装置から降りる。
「ね、本物でしょ。」
「……ああ、アーヤにシグムント様を見せたくてここへ来たのか。」
 エドアルドが言った。
「うん。アーヤをはずしちゃったから。」
 アーヤが話しかけているが、シグムントは一切無言だった。カペル達はもうセラフィックゲートからの帰り道で試したことだが、アーヤは初めてだから仕方ない。
「……本当に無視なのね。」
「うん。」
 カペルはシグムントの剣を見つめた。「で、剣なんだけど。」
「見たことがないわね。」
「ね? というわけで、父さん? この父さんが僕にくれたエンブレムソードから作った神剣蒼竜とそれ交換して。」
 シグムントが無言で剣をくれた。「名前はバルムンクか……。」
「詳細を見てみたら? 何か分かるかも。」
「セラゲの貴重品だろう。入った時に、そんなことが書いてあった。……宙に。」
 エドアルドが溜め息をつく。
「SO3だとアナウンスしてくれて、フェイト達が反応するのにね。僕たちにはそれすらないよ。」
「……そういう楽屋落ちは止めなさい。」
「はい。」
 カペルはメニューを開き、バルムンクの詳細を見た。「……影玄王ヴォルスングが生まれて……。」
「……くる我が子の為……。」
 呆然としているカペルを押しのけてアーヤが続きを読み始めたが……。彼女は口を押さえた。
「作らせた剣、か……。」
 エドアルドが読み終えた。「! ……ということはつまり……これは……。」
「僕のための剣ってことだよね!?」
「そうなる……。」
 エドアルドがカペルを見つめている。
「カペル……。」
 アーヤが心配そうに呟く。カペルは無言のままの父シグムントを見つめた。
「父さん……。」
 カペルがルナグラムを授かっていたら、この剣はカペルの部屋に飾られていたのかもしれない。それか、武器庫に置かれ、幼い自分はそれを使う日を楽しみに眺めるなんてこともあったのかもしれない。そして大剣を使う父とこれを持った自分が手合わせしたり……。
「カペル? 何……その顔? ちょっと、エドアルド! カペルが!!」
「おいおい、せっかくアーヤに溜まったものを出させてもらって、元に戻ったのに……!」
「……ルナグラムなんてこの世からなくなってしまえばいいんだ……。あんなものがあるから……。」
 カペルは剣を手にふらふらと歩き出した。「僕、ちょっと月に行ってくる。今なら一人でもベラに負ける気がしないんだ。」
「カペルーッ。」
「おいっ、しっかりしろ!」

 その後、何とか元に戻ったカペルは、イセリア・クイーンを見て、また黒に戻りかけたという……。

終わり
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